印紙税削減の根拠
電子契約導入のメリットの一つとして、印紙税の削減があります。なぜ電子契約にすると印紙を貼る必要がないのでしょうか。その根拠となる政府見解などについて解説します。
① 印紙税の課税対象は書面の文書だけ
そもそもなぜ契約書に印紙を貼る必要があるのでしょうか?この根拠を知ることが、電子契約に印紙が必要ないことを知るヒントとなります。
契約書に印紙を貼るのは、印紙税法という法律があり、その第2条に以下のように決められているからです。
印紙税法第2条「別表第1の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。」
別表第1には、“不動産、鉱業権、・・・・、営業の譲渡に関する契約書”“請負に関する契約書”“売上代金に係る金銭の受取書(いわゆる領収書)”など、20項目が印紙税の対象文書として記されています。
つまり印紙税法第2条では、課税文書として書面の文書だけを指しているので、電子文書は含まれないと解釈する考え方が一般的です。
② 国税庁ホームページでの見解
上記の考え方だけでは、まだまだ不安だ、本当に大丈夫なのか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで国税庁の見解も確認したいと思います。 国税庁のホームページでも以下のページで印紙税の課税文書に関する見解が示されています。
請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について http://www.nta.go.jp/fukuoka/shiraberu/bunshokaito/inshi_sonota/081024/01.htm
ここでは、「本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。」とはっきりと記されています。
つまり、“電磁的記録であれば(注文請書の)現物を交付したとは言えず、課税文書を作成したことにはならないので印紙税の課税原因は発生しない”と書かれています。
③ 小泉首相(当時)の国会での答弁
さらに2005年に、当時の小泉首相が参議院議員の質問に対して、以下の内容の答弁を行なっています。
参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(小泉純一郎首相)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm
この答弁において、「五について」という項目の中で以下の見解を示しています。
「事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。」
このように国税庁および政府の見解としても電子契約における電子ファイル化された契約書には印紙税の課税原因が発生しないと示されています。