電子契約サービスの導入事例
電子契約の導入企業においては、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
電子契約導入のメリットとして、①印紙税を含む契約コストの削減、②契約事務の効率化などがありますが、迅速にそのメリットを感じていただけるのは、契約業務の多い企業となります。ここでは建設業、流通業と言った年間の契約数が数百件以上になる企業の事例を説明します。
中堅ゼネコン 株式会社M建設の場合
(導入前の状況)
M建設では、公共工事や民間工事を受注した後、専門工事業者と呼ばれる建設工事の下請業者と個別に契約書を結んでおり、その件数は年間300件程度に及んでいた。これらの契約のなかには、継続的に取引をしている業者とは、基本契約書を交わした後、注文書、請書という形で個別の契約を結んでいた。
こういった状況で、M建設が使用する印紙代は年間500万円程度におよんでいた。
併せて、下請業者が負担する印紙代も、各社の使用料の合計は同程度の金額となっていた。
(導入の経緯)
M建設では、電子帳簿保存法および電子署名法の施行に伴い、建設業法が改正になったことと併せて、印紙代の節減を目的に電子契約の導入を検討した。
まず電子契約サービスを提供している会社を探したが、当初は、どの程度、電子契約に移行できるかが不確かであったので、初期投資のかからないサービス提供会社と契約することにした。
また契約業務においては、こちらの都合のみで電子契約を導入するというわけにもいかないので、あらかじめ導入に協力的な下請け業者に打診を行ない、サービス導入時には下請け業者の4割の企業の同意を得ることができた。当初は、電子契約そのものの理解が乏しいため、消極的であった下請け業者も印紙代を大幅に削減できるということを知ると電子契約導入に積極的に協力してくれた。
(導入後のメリット)
M建設では、電子契約導入によって以下の大きな成果を上げている。
1)印紙税の削減
M建設では年間300件の契約件数のうち、約7割について電子契約を導入することができた。その結果として、印紙代350万円を削減することができた。サービス提供会社に支払う使用料を差し引いたとしても180万円の経費削減が実現できた。併せて、下請け会社の8割程度が電子契約に協力してもらったが、下請け業者でも各社5~30万円、合計で400万円の印紙代を削減することが可能であった。下請け業者は、M建設と同じプラットホームを使用したため、サービス提供会社に支払う費用はゼロであった。
2)発送費用等の削減
契約書のやり取りには、担当者が直接持参する場合や郵送する場合があるが、電子経緯役ではインターネットを通じて契約書のやり取りおよび捺印等を行なうので、持参するための交通費や郵送費がまったくかからなくなった。郵送費自体の削減額は年間で数万円程度であったが、M建設においても下請け業者においても、契約書を直接持参することがなくなったので、その手間がかなり減った。また、それまでは契約書を持参するので併せて打ち合わせも行なっていたが、契約書を持参する必要がなくなり、訪問による打ち合わせも本当に必要な打ち合わせのみに限定され、それにかかっていた人件費はかなり削減できたと推定される。
3)業務効率化
電子契約ではインターネット上で契約書の確認、捺印および送付を行なうので、従来の紙ベースで契約書を作成していた時よりも業務効率が格段に良くなった。例えば、契約書を印刷、製本する時間や郵送するために送り状を作成する時間、宛名の印刷(または手書き)、封入、投函する時間がまったく必要なくなった。これだけでも相当の業務効率が良くなった。それだけでなく、契約書を探し出す時間も大幅に削減することができた。これまでは前年度以前の契約書であれば、いちいち保管庫まで行き、段ボール箱を開けて探す必要があったが、電子契約では契約書がサーバーに保管されており、検索機能も充実しているので、ほとんど探す手間がなくなったと言える。
また上記にも書いたが、これまでは契約書を持参することが多く、それに伴って、打ち合わせの時間も増えていた。電子契約を導入しても重要な打ち合わせについては、対面で行なう必要が残っているが、それ以外の打ち合わせについては、対面ではなくメールや電話などを活用して行なう習慣がつくようになった。